Z jincup ceramic
size : M / L
color : White / Cobalt
シン・ジンカップ(jincup ceramic)。
木製jincupの生産が追いつかず悩んでいる時に、友人のセラミックスタジオ「ONE KILN」とのコラボレーションで生まれた作品。波佐見の職人さんたちの技術を活かし、それぞれに自然な個体差があります。ユスの木の灰(柞灰)を釉薬に用いて制作した新作です。
ぼくらは毎日10時と15時にコーヒーを飲むんです。
20年以上、毎日使っているお気に入りのコーヒカップがあります。
「(中茅窯)川野さんのカップの釉薬は作灰(ゆすばい)を使って作ってるんだぞ」
親父から聞いていたけれど、聞いた当時は(木工作家なので)薬のことはよく分からなかったが
好きな色で、毎日毎日毎日毎日使っていて見えてきたことがあります。
昨年、コーヒー釉薬を作る経験をして、柞灰釉薬の原材料は木から出来ているんだと気づいたんです。
柞の木を高温で燃やした灰が釉薬になるんだと。僕がやったことのない木工、
「ネオ木工だ!」と言語化できて、
柞灰でjincup ceramicを作ることしか考えられなくなりました。
柞の木は鹿児島や宮崎で育つ銘木で、深みのあるいい色をしていて地元のおじさんの中にはファンが多い。
特徴として、とても堅くて比重が重い木が南国鹿児島の強い日差しを浴びておおらかに育つので、製材後も捻れたり木割れしやすいという性質があり、指物家具や建材として使うと完成後に予想できない動きをするので、
ほくらは家具制作に選んでこなかった木なんです。
まず、自分たちで灰を作ろうと考えて、市場で作の木を落札して、同時にONE KINの城戸さんに話したところ、
すぐに取り寄せた柞灰を使いテストで焼き上げてくれたんです。仕上がりは上手くいかず、台座にくっついたり
穴が空いたりしたんですが、釉薬が溶けてガラスが溜まっている部分がとても美しく、可能性を感じました。
それから川野さん含む色々な先輩方に教えを請いました。
柞灰は鉄分が少ないため、大昔から作陶家たちが「白」を求めて研究してきた歴史があること、
今は作の木が減ったため天然の柞灰がなかなか作れず、現代では人工作灰が主流であること、
人工的に成分を混ぜて作るためこちらの方が鉄分量が均一で仕上がりが安定するということ。
川辺の隠れ落という大きな穴窯でも作しました。
粘土で作ったそのままの器や素焼きの器を素に並べ、3日3晩薪を燃やし続けて焼き、器に掛かったその灰が
1200度の温度で溶けて不純物が燃焼します。残るのはガラス質。
「これが釉薬の正体だ!」ダンプから巨大な薪を下ろし、みんなで窯に焚べながら友達になりました。
人工作灰を見て釉薬をより深く知るため、
城戸さんと波佐見の工房をいくつも訪ねました。
釉薬の素材屋さんに伺い、たくさんの色見本や品物を見せていただきました。
鉱物の世界である釉薬の粉の管理はすごく面白くて、
興味深くやりとりしていると、
「うちは歴史があるので、天然作灰も持ってますよ」
という話が出ました。今はわざわざ高価な天然の
柞灰を選ぶ人がいないので使われることはほとんど
ないが、昔から持っている在庫が残っていると。
「ウヒョー!天然でやります!」
その場で天然柞灰を押さえてもらいました。
少年からおじいちゃんになっても、モノを作り、
それを使うことを楽しめる社会であるために、
これからも真剣にモノづくりに向き合っていこうと思います。
コップを毎日使う「あなた」の生活に溶け込み、
幸せな時間に寄り添う器になることを願います。
わっせー
AkihiroWoodworks、ONE KILN、波佐見の藍染さん、
生地職人の土橋さん、隠れ窯のイケおじたち、川野さん、取扱店、
あなたに感謝を伝えさせていただきます。
Neo木工作家アキヒロジン